これからのエンジニアの働き方を「趣味×キャリア」で考える
目次
はじめに
新型コロナウイルス感染症に端を発した「働き方改革」に伴い、リモートワーク、副業・兼業、フリーランスなどこれまでにない新しい働き方が次々と生まれています。
ITエンジニアは技術力とIT環境があれば様々な仕事ができる職種です。通勤のために都心部に住む必然性が低くなったため、地方に移住を検討するエンジニアも増えています。移住の理由として、以前は週末の楽しみだった「キャンプ」「渓流釣り」「サーフィン」などの趣味を、移住することで日常的にできるようにしたいというものがあります。このような動向の中、改めて「自分らしい働き方とは何か」を考えた方も多いのではないでしょうか。
本記事では、ITエンジニアが「自分らしく働く」ための考え方を紹介いたします。今回は、考えるポイントとして挙げられやすい「趣味」に焦点を当てて詳しく解説していきます。
IT エンジニアを取り巻く環境
まずは、IT エンジニアを取り巻く環境について見ていきます。
- IT エンジニアの需要
- ITエンジニアの働き方
- IT エンジニアの専門性
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ITエンジニアの需要
経済産業省の「IT人材需給に関する調査(概要)」によると、2030 年には最大約 79 万人の IT エンジニア不足が生じると試算されています。
出典:経済産業省「IT人材需給に関する調査(概要)」
現在、 AI や IoT 技術などの先端技術の急速な発達や、デジタルトランスフォーメーション( DX )に投資する企業の増加、 2021 年 9 月のデジタル庁設立など、日本全体で ICT 投資が活発になっており、今後も IT エンジニアの需要は伸びていくことが予想できます。少子高齢化の影響で日本の生産年齢人口が減少しているため、限られた IT エンジニアを複数の企業が取り合う構図は今後も継続すると考えられます。
実際に、ウォンテッドリー株式会社が行った「デジタル人材に関する調査」によると、 69% の企業がデジタル人材が不足していると回答しています。この調査における「デジタル人材」とはエンジニア、デザイナー、 WEB ディレクター・プロデューサー、データサイエンティスト、プロダクトマネージャーなど、デジタル領域の業務を行う人材を指しています。
また、デジタル人材の不足人数としては、1~5 名という回答が 62% で最多、職種別ではエンジニアが 67% で最多という結果が得られています。
出典:ウォンテッドリー株式会社「デジタル人材に関する調査」以上から、多くの企業が IT エンジニア人材の不足を感じており、この傾向は今後ますます深刻になることが推測できます。
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ITエンジニアの働き方
ITエンジニアの働き方は多様化しています。2017 年に閣議決定された働き方改革によって副業が推進された結果、副業をはじめる人が増えました。近年では、IT エンジニアが個人で案件を獲得できるプラットフォームが増えているため、フリーランスに転向する人材や副業(複業)する人材がより一層増えています。
出典:ランサーズ株式会社「新・フリーランス実態調査 2021-2022年版」
ランサーズ株式会社が実施した「新・フリーランス実態調査 2021-2022年版」によれば、フリーランス人口は 1,577 万人、経済規模は 23.8 兆円であると報告されています。この数値を 2015 年と比較すると、人口は 68.3%( 640 万人)、経済規模は 62.7%( 9.2 兆円)増加という結果であり、フリーランス市場は大きく拡大していると言えます。
コロナ禍の影響を強く受けているとはいえ、「得意分野を活かせる」「興味のある分野に挑戦できる」「企業に属すよりも高い報酬を得られる可能性がある」など、ビジネスパーソンが特定の企業に所属する必要性が薄れつつあることを示唆していると考えられます。フリーランスで働くという選択肢が増えたことも、企業の IT エンジニア採用難易度を上げている要因のひとつといえます。
また、株式会社パーソル総合研究所が行った「ITエンジニアの人的資源管理に関する定量調査」によれば、 IT エンジニアの入社理由ランキング 1 位は「安定して働ける環境」で 53.8% と報告されています。
出典:株式会社パーソル総合研究所「ITエンジニアの人的資源管理に関する定量調査」
2 位は「成長できる環境」で 40.4% 、 3 位は「技術を伸ばせる環境」で 38.3% となっており、 IT エンジニアの成長志向が強い傾向が伺えます。「プライベートな時間を確保できる環境」「エンジニアに対する処遇」は同率 6 位と比較的高いものの、「キャリアあってのプライベートや趣味」という価値観を持っているITエンジニアが多い可能性があります。 -
ITエンジニアの専門性
AI や IoT 技術などの先端技術の急速な発達や、デジタルトランスフォーメーション( DX )への積極投資など、企業の採用ニーズは非常に高い状況にあります。ここでいう DX は、自動車業界の CASE (ケース)や、 FinTech (フィンテック)、 HealthTech (ヘルステック)といった、ある分野に最新のIT技術を導入することを意味する「 X-Tech (クロステック)」も含まれます。様々な業界で IT 技術の導入が進んでいるため、 IT エンジニアに求められる専門性は多様化しています。一方で、専門性によって需要の大きな違いがあることも事実です。
汎用性の高いプログラミング言語である Java や、 AI 開発で活用される頻度が高い Python 、 IoT 技術の発展に伴って注目が集まる C 言語などは、求人倍率が高騰しています。レバテック株式会社の「ITエンジニア・クリエイター正社員転職・フリーランス市場動向 2022年7月」によると、 Java ( BtoB )は 21.8 倍、 Python は 16.6 倍、 C 言語は 13.2 倍と極めて高い求人倍率となっています。
出典:レバテック株式会社「ITエンジニア・クリエイター正社員転職・フリーランス市場動向 2022年7月」以上から、ITエンジニアの需要は高まっており、自由度の高い働き方を選べるほどに売り手市場にあると言えるものの、周囲のITエンジニアの成長意欲の高さやトレンドの移り変わりの速さを考えると、キャリアアップは避けては通れないことが示唆されます。
今よりも趣味の充実を目指す場合は、キャリアと趣味のバランスをとることが重要だと考えられます。
IT エンジニアが趣味とキャリアのバランスをとるために
需要の高まりによって、ITエンジニアは一層自分らしく働きやすくなったと言えます。しかしながら、自分らしさを重視するあまり、自身のキャリアの障害となってしまっては、継続的に働くことが困難になります。自分らしく働くためにはバランスが重要です。
ここでは、ITエンジニアが趣味とキャリアのバランスをとるために考慮すべきポイントを紹介します。
- 趣味をどの程度重視するかを考える
- 目標設定し優先順位をつける
- ITエンジニアの専門性
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趣味をどの程度重視するかを考える
趣味とキャリアのバランスを考えるにあたり、まずは、趣味をどの程度重視するかを考える必要があります。趣味との関わり方を考えることで、より充実した人生を送るために何が必要かが見えてきます。
本来、趣味とは「楽しみ」や「ストレス発散」の場になります。日々の生活を忘れ、気持ちをリフレッシュさせることができます。また、趣味を通じて新たな経験やスキルが得られることもあるため、生活の質を向上させる意味でも趣味は重要なものと言えます。
ひと言で趣味と言っても、キャンプや山登り、サーフィン、サバイバルゲームなどアウトドアな趣味もあれば、オンラインゲームや将棋、手芸、パズルなどインドアな趣味もあります。
アウトドアな趣味は、休日にしかできないケースがほとんどかと思います。しかしながら、
リモートワークの普及により通勤をする必要性が減ったため、移住することで趣味の時間を確保することも可能です。移住が視野に入る場合、衣食住において趣味の充実がどの程度重要なのかを考える必要があります。一方でインドアな趣味は居住地に依存しません。趣味に没頭する時間さえ取れれば解決する可能性があります。また、インドアな趣味であっても通勤時間を削減することでさらなる時間を確保できます。
また、趣味はあくまでも気分転換であり、仕事に重きを置きたいと考える方もいらっしゃると思います。その場合、プライベートに使う時間がどの程度必要かを考えておくことをおすすめします。自分が思い描く充実した人生がより具体的になり、今後の計画を立てやすくなります。
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ITエンジニアの働き方
ここでいう目標とは、自分が理想とする生活の状態を指します。
日々業務に追われる中で、改めて「自分らしさ」「自分らしい暮らし」「自分らしいキャリア」を考えることは簡単ではありません。しかしながら、忙しさを理由に考える時間を取らない限り、理想の状況が得られないことも事実です。週末や有給休暇を利用して、この機会に考えることをお勧めします。
自分が理想とする生活の状態を考える際、「自分はどんな状態を好むのか?どんな状態を嫌うのか?」を洗い出してみましょう。洗い出した結果を眺め、傾向を掴むことが理想の生活を実現する第一歩です。
ときには、好きなことの実現のために嫌いなことに挑戦しなければならないようなこともあります。その場合にはこれらを天秤にかけ、譲れないものは何かを判断することが自分らしい選択をしたということになります。
「自分らしさ」とは「楽をする」ということではありません。「自分が理想とする生活」を実現するために、どのような努力が必要なのかを洗い出し、時には困難なことに挑戦することこそが、「自分らしい働き方」です。
より具体的にイメージをしていただくために、例を挙げます。
【現状の生活】
現在は世田谷区に住みながら渋谷区の会社に毎日通勤している。週末は湘南に出向き、趣味のサーフィンで日頃のストレスを発散している。
【理想とする生活】
仕事がある日であっても、毎日サーフィンを楽しむ生活を送る。気分転換のために日中も海に散歩に行ったりサーフボードをメンテナンスできる環境にいる。趣味に対して時間とお金を惜しむような生活を送りたくない。
この場合、最大限サーフィンに時間を割けるよう、藤沢や鎌倉あたりに移住することが有力な選択肢になります。また、単にサーフィンに時間を割きたいだけなら、ITエンジニアである必要はありません。ITエンジニアとしての仕事量を減らして、趣味に割く時間を増やすことも選択肢に入ります。しかしながら、サーフィンに時間と金を投資したいという想いがあるため、一定以上の報酬は必要になります。フルリモートワークを認めてくれるような企業に転職することで実現できるかもしれませんが、見方を変えれば、フルリモートワークであっても価値を発揮できるエンジニアになっていなければならないことも見えてきます。
結果として、やらなければならないことは以下のように整理されます。
・ 湘南近辺に移住する
・ フルリモートワークが可能な職場に勤める
・ 休みをとっても文句を言われないレベルのエンジニアになるこのように、「自分らしい生活」を突き詰めると、「自分らしいキャリア」や「優先順位」が決まっていきます。
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第三者の意見を取り入れる
改めて自分の人生を考えるのは、決して簡単なことではありません。また、どれだけ考えても、自分の経験や知識の枠から出ることは少なく、柔軟な発想が生まれない場合も多くあります。これからの人生を左右する重要な意思決定になるため、ぜひ様々な方の意見を取り入れて多角的に考えることをお勧めします。
先輩や友人は最もコミュニケーションをとりやすい方たちです。自分の希望や考えを伝えながら、意見や感想を求めてみましょう。自分一人では思いつかなかった提案が返ってくることも多くあります。
尊敬しているエンジニアや実業家がいれば、彼らの過去を調べてみるのも手です。どのような経験をして今の立場に至ったのかを詳細に理解することで、自分に足りないものが見えてくるはずです。
転職エージェントに相談をするのもおすすめです。ある程度キャリアを重ねた方の中には、転職するつもりが無くても定期的に転職エージェントと面談をして、自分の置かれている立場や市場価値を客観的に捉えようとする方もいらっしゃいます。転職をするしないに関わらず、仕事選びのプロの意見を聞くことで、より具体的なキャリアプランがイメージできることも多くあります。
まとめ
本コラムでは、ITエンジニアが「自分らしく働く」ために、「趣味」と「キャリア」のバランスを考える方法を紹介いたします解説しました。
ITエンジニアとしてキャリアを形成するとき、役割やスキルといった要素を重視して考えると、苦しくなることがあります。自分らしさを失うことなく、自分らしさを大事にした生き方とは何かを考えることが、充実した人生を送るために不可欠です。
新しい生活様式が誕生し、これまで実現できなかった多様な働き方が可能になりました。この機会に、自分らしさを大事にできる「趣味との関わり方」「暮らし方」を考えてみませんか。
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